JIPPOの中村尚司です。このブログに初めて書きます。 4月下旬から5月上旬にかけてスリランカ・タイ旅行に赴きました。若干の報告をします。
 スリランカ議会で政府与党の一角を占める「民族の遺産」党の議員団長であるラトナ師の寺院を今回訪ねました。同師は4月8日に実施された総選挙で、僧侶としては最高の得票数を得て国会議員に再選され、意気軒高でした。「現政権の閣僚になる道もないわけではないが、非僧非俗の道を選び、当面インドのダリット仏教徒の交流に力を入れたい」と言っていました。現在、マハーラーシュトラとUPのダリット僧を招いて、上座部仏教の問題点を明らかにし、釈尊の教えに復帰する道を模索しているそうで、滞在中の数名のダリット僧を紹介してくれました。学生時代に革命家として武装蜂起に参加し、刑務所に収監されていたがたが、釈放されたのち仏教研究に方向転換したそうです。仏教学の修士課程においてパーり語のテキストを吟味したところ、ブッダゴーサが教団組織の存続を強化するため、本来の仏陀の教えから離れ、自己完結的な孤絶した教義体系を築いたことが判明した。スィアム・ニカーヤを中心とする上座部派仏教の教団組織と戦い、もういちどナーガルジュナやバスバンドゥの視座に戻り、広範なアジア仏教が相互に協力できる道を拡げたいと主張していました。5月末にナーグプルで、ダリット仏教の大きな集まりがあるから、一緒に行こうと誘われました。
 5月上旬にバンコクで、International Network of Engaged Buddhism の運営員会があり、参加しました。そこでは、スリランカの政治僧が突出してダリット仏教に方向性を与えようとする試みには、批判的な声もありました。しかし同時に、インドの仏教徒が急増しているにもかかわらず、統合力のある教義を体系化できていないという疑問も述べられていました。INEBの主要な担い手は、タイの高僧ブダダーサの教えを継承する人びとです。タイ在住でタイ仏教に詳しい飯村浩さんに教えていただき、社会参加する寺院とそのリーダーを訪ねました。
 タイのエンゲージド仏教の拠点は、コーンケーン郊外のスカトー寺とカンチャナブリ郊外のスナン寺にあります。ともにモンクート王の創設した森林派の寺院で、厳格な修業で知られています。本年2月に両寺院を訪問し、前者の副住職が、アーチャリヤ・ユキという上智大学出身の日本人であることを知りました。後者の住職であるアーチャリヤ・ミツオは、もともとインドで修業しようとした日本人です。今回、チュラロンコーン大学のゲストハウスに宿泊していました。
旧知の社会科学系の教員に会うたびに聞いてみました。すると、アーチャリヤ・ミツオがタイ語で書いた法話は千万部以上が刊行され、文字を読めるタイ人で同師の名前を知らない人はいないと知り、驚きました。30年間もタイに住む同師が、日本人であることを知らないタイ人も多くいました。
 ちなみに同師の所属される森林はの教団タマユットニカーイの教育機関は、マハマクート仏教大学です。9割以上の仏僧が所属する マハーニカーイの教育機関は、マハチュラロンコン仏教大学です。たまたま同師が故郷の岩手県に行かれるという話を聞き、龍谷大学へのご来駕をお願いしました。5月13日の午後3時から大宮学舎の清和舘3階で、ご自身の体験とタイ仏教に関する講演をしていただきました。主催は龍谷大学実践真宗学研究科で、共催がNPO法人JIPPOです。 同師と食事をともにしたり、西本願寺境内を案内したりしながら、下記の様なお話も伺いました。
1、小さいときから「人生とは何ぞや」という疑問を持っていた。中高のとき登山をしていたが、登山は死と隣り合わせなのでよく人生の意味を考えた。
2、高卒後のサラリーマン生活も悪くなかったが、やはり人生について追求することを決意。
3、インドでヨガでの瞑想(サティ=気づき)により、一生ヨガ瞑想を決意。しかしビザが下りなかった。フランス人僧侶の勧めでタイで出家した。

 INEBの運営会議で話し合った結果、日本でも活動を広げようということになりました。東京の関係者と話し合った結果、築地本願寺で次のような講演会を行います。
社会を変える仏教
グローバル化する世界の中で〜

The recent economic crises that have hit almost every national economy in the world as well as the ever-deepening global environmental problems are reaffirming the need for a new social vision that goes beyond the industrial growth model. Unfortunately, in response to these challenges, all of the great world religions have given birth to reactionary and fundamentalist movements that have added violent cultural conflict to the mix. Yet, at the same time, our religious traditions have the potential to join with the growing global cultural movement to provide a peaceful and sustainable paradigm for the 21st century. In all parts of the world today, there are Buddhists engaged in this movement. Sulak Sivaraksa, founder of the International Network of Engaged Buddhists (INEB) based in Thailand, and Harsha Navaratne, formerly of the Sarvodaya Shramadana Movement in Sri Lanka, are two such global Buddhist leaders. Over the past 40 years, they have been developing a vision of a Buddhism which can benefit the public good and have been putting this vision into practice through grassroots civil society and community development. Please join us for an evening with these two renowned Buddhist social entrepreneurs and learn of your own potential to join this movement.

■ 日時:平成22年6月23日(水)13時半開場・14時開演
■ 場所:築地本願寺
■ 主催:JNEB(Japanese Network of Engaged Buddhists)
■ 対象:僧侶・寺院関係者・BNN(仏教NGOネットーワーク)参加団体
■ プログラム?
14:00 主催者あいさつ:岡野正純(孝道教団統理)
14:05 「エンゲイジドブディズム」の入門:ワッツ・ジョナサン(仏教国際交流センター)
14:15 講演:スラク・シバラク(INEB創立者
「社会を変える仏教:グローバル化する世界の中で」
15:00 休憩
15:15 フロアとの質疑応答
15:45 講演:ハルシャ・ナバラトナ(INEB理事長)
「INEB(International Network of Engaged Buddhists)の未来図」
16:30  フロアとの質疑応答
17:00  閉会